その後も、何かにつけて助けてもらうことが増えた。直近では私が地方出張する日と長兄の転院日が重なり、代理をお願いした。

40を過ぎるまで、私と次兄は趣味嗜好が違っていて、あまり親近感を持てなかった。しかし60を過ぎた今、私は誰よりも次兄を頼りにするようになった。

最後になるが、人間、年を取ると容姿の美しさも体力も知力も、どんどん失われる。しかし、その人の性格は最後まで残る。意地悪な人はいじめを続け、疑り深い人は人を疑ったまま死ぬ。性格が悪いと、死ぬとき悲惨だ。

母の最晩年、入院して寝たきりになった時、看護師さんが「山口さんは着替えの時もおむつ交換の時も、手すりにつかまって体を支えてくれるので、とてもやりやすいんですよ」と言ってくれた。いろいろと欠点もあったけれど、最後まで明るく思いやりを忘れなかった母を、私は今でも大好きで、とても誇りに思っている。

近頃、肉親であっても、その関係性には旬があると思うようになった。かつて一家の大黒柱だった長兄は、今は私の扶養家族となり、世間知らずだった次兄は、安心して頼れる存在となった。

兄たちとの関係も、年を経て、互いの生活や環境が変わるにつれ、変化してゆくものだと実感している。