捨て身の交渉術は、大成功を収めた

ただし、その日は秀吉に会うことは許されず、政宗一行は箱根の山中に幽閉されることになりました。

その幽閉先に、秀吉方から前田利家や徳川家康らが訪ねてきます。「惣無事令」を破って蘆名氏と戦った理由や、小田原への参陣が遅れた理由を問い質(ただ)すためです。

これに対して政宗は、「参陣が遅れたのは、自分が奥州を不在にしている間に、敵対勢力に攻め込まれることを警戒してのものでした」というように、理路整然と弁明をおこないました。その姿は、死装束姿で皆の前に現れるという奇想天外なことをおこなった人間とは、とても同一人物とは思えません。

政宗はまさに、場面に応じて、また相手によって、振る舞い方を変えたわけです。

そして政宗は、ようやく秀吉との面会が許されます。

このときも政宗は、やはり死装束姿で秀吉の前に現れました。秀吉もなかなかのパフォーマーですが、政宗も負けず劣らずのパフォーマーです。

結局、秀吉は領地を一部没収するだけで、政宗を許してしまいました。政宗の捨て身の交渉術は、大成功を収めたわけです。

※本稿は、『日本史を変えた偉人たちが教える 3秒で相手を動かす技術』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。


日本史を変えた偉人たちが教える 3秒で相手を動かす技術』(著:加来耕三/PHP研究所)

プレゼン、会議、商談など、相手を動かさなければならない場面は数多い。どうすれば、相手を自分が思うように動かせるのか? それを教えてくれるのが、歴史上の偉人たちだ。交渉の場面で、彼らがどのように勝利を得てきたのかを知れば、仕事力が格段に上がる!