ジャーナリストの夫とは仕事を通じて出会い、松原さんが27歳のときに結婚。思い出深いという新婚旅行は、100日間かけてヨーロッパやアフリカ大陸を車で走り回るというものでした。計17ヵ国を訪れ、ときにはサハラ砂漠を走破するなど、まさに冒険旅行。松原さんもハンドルを握ったと言います。

――夫と結婚したからこそ、新婚旅行をはじめ普通なら行かないような場所を訪れ、貴重な経験がたくさんできました。夫や息子とともに訪れた国は47ヵ国。この数年はコロナ禍で出かけられませんでしたが、夫とは、落ち着いたらハワイに行こうね、と話していました。もう今はそれも叶いませんが。

 

下の世代との交流が元気の源

一人でいることが昔から苦手だったという松原さん。そんな妻を思ってか、「あなたを残して逝くのは心配。だからきちんと看取り、見送ってから僕も逝くよ」と言っていたそうです。

――それなのに、自分が先に旅立つなんて約束違反ですよね。毎日仏壇にご飯をお供えしながら、「何よ、勝手に早く逝っちゃって」と、遺影に向かって愚痴まじりに話しかけています。

夏の気配を感じれば、夫はスイカが大好きだったなあ、と思い出したり。食べ方が独特で、真ん中の美味しいところを先にとって、脇に置いておく。早く食べ終わった私がそれを横から取り上げると、「うん?」と不満そうな顔をするんです。

人が聞けばバカバカしいような他愛のない日常が頭に浮かぶたび、夫はもういないのだと思い知らされて。今は同居している息子が気遣ってくれますし、彼がいないときは誰かしら家を訪ねてくれます。だけどこれからは、「一人でも大丈夫」の自分にならなくてはと思っているところです。