恋愛ドラマと呼べる作品が消えつつある

凄腕の家庭教師・根津寅子(橋本愛)を主人公とする『家庭教師のトラコ』(日本テレビ)はお金の価値や教育の意味などさまざまなことを考えさせたが、一番のテーマは同時代を共に生きる者たちの隣人愛の尊さに違いない。

家族愛を知らずに育ったトラコはまず教え子3人と絆で結ばれ、一方でその心優しい母親たち(鈴木保奈美、板谷由夏、美村里江)が自らの母親でもあって欲しいと願った。トラコが3人に「お母さんと呼ばせてもらっていいですか」と頼むと、母親たちは笑顔で受け入れた。そこには確かに愛が存在した。同じ施設で育ったトラコと福田福多(中村蒼)は好意を寄せ合ったが進展せず、やはり同志と呼ぶべきであろう。

韓流ドラマを原作とする『六本木クラス』(テレビ朝日)も人気を博した。ほぼ原作通りの復讐劇で、恋愛要素を厚めに脚色しなかったところも成功の一因と見る。

リフォーム会社で営業を担当する真行寺小梅(波瑠)と福山玄之介(間宮祥太朗)が依頼人にとってベストのリノベーションを模索する『魔法のリノベ』(フジテレビ)もまた好評を博した。

ただし、徐々に厚くなっていった恋愛要素がこの作品に必要だったのだろうか。ちょっと疑問だった。

主演の中島裕翔(29)が高校の音楽教師に扮した『純愛ディソナンス』(フジテレビ)も純粋な恋愛ドラマではなかった。殺人あり、裏切りありの愛憎劇だった。

恋愛ドラマと呼べる作品が消えつつある。また働く男性、または女性のみフィーチャーするドラマも精彩を欠くようになり始めた。

この流れは止まらない。現実とドラマは軌を一にする。

写真提供◎AC