恋愛や結婚に興味のない人が増えている

相似点が多かったのが、やはり上々のコア視聴率とタイムシフト個人全体視聴率を得た『競争の番人』(フジテレビ)。坂口健太郎(31)扮する公正取引委員会の審査官・小勝負勉と杏(36)が演じる同・白熊楓の男女2人が主人公でありなから、恋愛関係にはならなかった。

小勝負と白熊はともに零細企業を苦しめる不正競争を憎み、正そうとした。2人の間にあったのも同志愛である。白熊には警視庁捜査1課刑事の大森徹也(黒羽麻璃央)という交際相手がいたものの、その恋愛事情もほとんど描かれなかった。

放送枠は「月9」。5年前までは毎期のように恋愛ドラマが放送されていたが、作風が一変した。

時代の現れに違いない。今年6月の内閣府発表によると、20代の女性の約5割、同男性の約7割が配偶者も恋人もいない。

相手に恵まれないからと考えるのは早計である。同9月に発表された国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、独身男女(18~34歳)で「一生結婚するつもりはない」と答えたのは男性が17・3%、女性が14・6%を占めた。ともに過去最高。恋愛や結婚に興味のない人が増えている。

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そうでなくても現実での異性との関係は恋愛を抜きにしたものがほとんど。それなのにドラマの中だけ、男女というと、すぐに恋愛関係になったら、そのほうが不自然なのだ。

ヒット作になった『ユニコーンに乗って』(TBS)は主人公の26歳の起業家・成川佐奈(永野芽郁)が、48歳の新入社員・小鳥智志(西島秀俊)を慕う一方、同い年で盟友の須崎功(杉野遥亮)から好意を寄せられた。もっとも、恋愛の要素は薄かった。

ストーリーの大半は会社を成功させようとする佐奈の奮戦記。佐奈、小鳥、功の三角関係にもならなかった。小鳥は佐奈を恋愛対象と見ていなかったし、佐奈が自分を慕っていることにすら気づいてなかったからだ。

坂元裕二氏(55)の脚本で評判高かった『初恋の悪魔』(日本テレビ)には恋愛要素が盛り込まれたものの、大半とは言い難い。このドラマはあらかじめ「警察モノ? ラブストーリー? 謎解き系? 実は青春群像劇? その全てがここに出会った!」と謳っていたが、その通りの内容だった。すべてが揃っていた。

2面の人格を持つ神奈川県警境川署生活安全課員・摘木星砂(松岡茉優)の片面と同署総務課職員・馬淵悠日(仲野大賀)が交際し、もう片面の星砂と同署刑事課・鹿浜鈴之介(林遣都)が好意を寄せ合ったが、ミステリーの要素も厚かった。ミステリードラマの本場である英国作品と肩を並べる水準だった。