歴史学から見た実朝像

こうした文学から見た実朝イメージに、歴史学は反対意見を表明しています。初めはぼくの師である五味文彦先生でしょう。

幕府が発する政所下文という文書の分析から、実朝は政治家としての務めをしっかりと果たしていたのだ、と指摘。それをさらに展開したのが時代考証役の坂井孝一さんで、実朝は名君だった、とおっしゃっています。

ぼくはどちらかと問われれば、文学者の実朝イメージかな。

それは政所の統括者だった実朝が、政務に精励していたと記された史料が見られないから。

政所ががんばって仕事をしていた、イコール、統括者の実朝が精力的だった、ことに必ずしもならない。下の者が仕事に励んで成果を出したけど、上は何にもしていない、なんてのは良くある話ですからね。