勝手に不愉快な思いをしていたのは私のほうだった

ただ、私自身がその人の年齢になってわかるのは、自分を通り越して何もかも進められてしまうのは嫌だということ。最近も、助手が付き添ってくれたクリニックで、お医者さんが助手の顔ばかり見て説明をするので、プリプリしながら言いました。

『どっこい生きてる90歳 老~い、どん!2』(著:樋口恵子/婦人之友社)

「そりゃあ、話し相手は若くてきれいなほうがいいでしょうよ。でも、患者は私です」

すると、助手は言うのです。

「お医者さんは最初、樋口さんに話しかけたんですよ。でもそのとき、いいかげんな返事をされたでしょう?」

たしかに診察室に入ったとき、何か質問されましたがマスク越しで聞こえにくかったので、適当に返事をしたのです。その受け答えが変だったので、会話が成り立たないと思われたようです。

「聞こえないなら何度でも聞き直したらいいんです。耳が遠いかどうかは医師にはよくわからないし、理解できていないと思われることもありますからね」

助手に言われて、反省しました。カッコつけて、聞こえないのに聞こえるふりをして、勝手に不愉快な思いをしていたのは私のほうだったのです。かくして、老人には矛盾や誤解が増えていくわけです。