ライフスタイルや価値観にもとづいて決断するほかない

また住宅の場合、すこし遠くに行けば、同じグレードの家でも家賃が下がりますから、借主側にはかなりの選択肢があります。

もし世の中の大家全員が結託して家賃を引き上げれば話は別ですが、現実問題として物価が上がったからといって、簡単には上げられません。最終的には、物価が上がれば家賃も上がりますが、そのペースは不動産価格よりは緩やかになると思ってよいでしょう。

日本は人口減少が進んでおり、基本的に住宅は余っています。需要よりも供給が多い状態ですから、普通に考えれば、借り手のほうが有利になります。

しかしながら、利便性が高い地域とそうでない地域の格差が拡大しているため、人気のあるエリアの物件では、必ずしも借り手が有利とは限りません。また、最近では事情が変わってきたとはいえ、高齢者には家を貸さないという大家も多く、生涯にわたって賃貸のままでよいのかは何とも言えません。

このように、住宅については多くの要素が複雑に絡み合いますから、最終的には、自身のライフスタイルや価値観にもとづいて決断するよりほかありません。

※本稿は、『スタグフレーション――生活を直撃する経済危機』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。


スタグフレーション――生活を直撃する経済危機』(著:加谷珪一/祥伝社新書)

2022年に入り、多くの商品で値上げが続いておりインフレの様相を呈している。専門家の多くが「デフレ」を大合唱していた数年前から、現今の情勢を予測・発表してきた著者は、円安という特殊要因が加わる日本ではさらに厳しくなり、不況下のインフレ、すなわちスタグフレーションに陥る可能性がきわめて高いと言う。賃金が上がらず、物価だけが上昇する状況では、もはや単純な節約では乗り切れない。これまでとは異なる対処法が求められる。スタグフレーション時代にいかにして生活を守るか。国際経済の動きとも絡めて、説明する。