(撮影◎中西正男)
漫才コンビ「B&B」として漫才ブームのトップランナーとなり、私小説『佐賀のがばいばあちゃん』シリーズ累計1000万部を突破している島田洋七さん(72)。40歳の頃からは講演会をメインに活動し、多い時には年間300回以上各地でしゃべりまくりました。ただ、その流れも新型コロナ禍で完全に停止。その中で向き合った思いと新たな出会いがもたらしたもの。そして、今一度痛感した芸人としての矜持とは。(取材・文・撮影◎中西正男)

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そえんじとの出会い

オレがね、九州で『島田洋七の朝から言わせろ!』(KBCラジオ)という番組をやってて、そこに同じ人から何回もメールが来るようになってね。

内容を見てみると、5~6年前に兵庫の加古川でオレが講演会をやった時に前座で歌ってくれた歌手の人みたいで。スタッフに調べてもらったら、実際に大阪でラジオ番組も持ってしっかりと活動している「そえんじ」という人やと分かったんです。

頻繁にメールもくれるし、文面を見たら本当にオレの熱烈なファンやということがよく分かるのよ。中学の頃からファンで、何回も弟子入りをしようと思ったけどできず、講演だけでも数十回は足を運んだと。

今は大阪のミナミで“流し”の仕事もしてるらしいんやけど、そもそも歌手になった理由を聞いて、心が震えたんよ。というのは、歌手になって売れたらオレに会えるかもしれない。その思いで歌手になったと。

この歳になって、こんなに応援してくれる人がいるんやと。純粋に、ものすごくうれしい話やし、今でもこれほどオレのことを好きでいてくれる人がいるんやったら、もう一回、オレも頑張らなアカン。ホンマにそう思いました。

去年から実際に飯を食いに行ったりするようになって、さらに、そえんじのおばあさんがオレの住んでいる佐賀にいらっしゃると。それもあって、佐賀で会ってそえんじと一緒におばあさんに会いに行ったりね。

洋七さん(左)と、そえんじさん(右)が、そえんじさんのおばあちゃん(中央)を佐賀に訪ねて(写真提供◎島田洋七さん)