その「やばい」、「深刻」なのか「秀逸」なのか
たとえば「書く」という言葉、少し文学的に表現するなら「認める」、本などを出すなら「著す」、格調高くするなら「綴る」「筆を執る」、実用的な表現だと「記す」「記載する」など、実に多様な表現が存在する。
プライベートな場ではお喋りも得意なのに、プレゼンや会議などで話すときは言葉遣いにもう少し気を付けたい、という人も多いだろう。言葉に品格を持たせたい、あるいはシチュエーションによって使い分けたい、自分だけではなく息子や娘にも知っておいてほしい、そういう方にも薦めたい一冊だ。
数ある国語辞典のなかでも大修館書店が出している『明鏡国語辞典』(現在は第三版が最新)は、文法項目や言葉の品格、似た言葉の使い分けなどにもっとも力を入れている辞典だ。その辞典作りの知見のなかでも、明鏡の売りの一つである「品格」という項目を抽出して編集部が再編集しているのがこの辞典。
似た表現とのニュアンスの違い、どういうシチュエーションで使えばいいのか、シンプルな用例とともにまとめているので非常に使い勝手がいい。索引や言葉の分類も、ユーザーへの思いやりに溢れた仕事で感動する。品格レベルを星の数で表す工夫も重宝する。
ある言葉を、マイナスの意味とプラスの意味ならこういう言い方があるよ、と座標軸にまとめてくれていたり、文字を詰め込み過ぎずにユーモア溢れるイラストも入れてビビッドな紙面にしてくれているのがうれしい。
「やばい」など、文末で使えばどんな意味にも取れてしまうような形容詞も、品格を上げるなら「凄まじい」「甚だしい」、マイナスの意味なら「深刻」「由々しい」「危険」、プラスの意味なら「秀逸」「比類ない」「極上」などの選択肢もあるよ、と意味別、品格別に配置する。表現を志す人にも手元に置いてもらいたい。