緊急避難の目途が立った

しかし相手の態度はまったく変わらなかった。子どもが泣いてもあやさない。家事も育児もワンオペ。松本の実家に行くと、両親に挨拶もしない。ずっとスマホをいじっていて、会話にも入ってこなかった。

『コロナと女性の貧困2020-2022――サバイブする彼女たちの声を聞いた』(著:樋田 敦子/大和書房)

親が眉をひそめているのがわかって、松本もつらかったという。 「2020年に子どもたちを連れて家を出ました。育休中に居住する区の女性支援課や女性センターの法律相談の弁護士にも相談していて、秘密裏に離婚の準備を進めました。区役所は状況を話すと、母子寮を手配するように動いてくれ、緊急に避難する場合には一時保護してくれると言いました」

区は約束どおり計画を進めてくれ、2人の子どもと母子寮に入った。

「母子寮の家賃は安いので、ここにいる間に職場復帰して貯金して寮から出て生活していこう」

そう松本は考えていた。母子寮の家賃は年収200万円程度では6000円台。育休中で収入はなかったが、あと数ヶ月で職場復帰できるので、下の子の保育園が決まれば問題ないと思った。