「母子寮に入っていてひとり親なのは間違いないのに、ひとり親と認定してくれないのは、どうしてなんでしょう」と会社員の松本昭子さん(仮名・41歳)は悩む(提供:photoAC)
新型コロナの感染拡大で家にいる時間が長くなったことで、DVや父親の虐待、性暴力などの困難を抱える女性が増えていると言われます。実際、全国の配偶者暴力相談支援センターと「DV相談プラス」に寄せられたDVの相談件数を合わせると、2020年は前年度比で約1.6倍まで増加しているそうです。元新聞記者で、女性や子どもたちの問題をテーマに取材執筆を行う樋田敦子さんによれば、モラハラ夫から逃げてひとりで子育てをしている「実質ひとり親」家庭では、経済的・精神的により苦しい状況に置かれているそうで――。

別居中・離婚前のひとり親家庭

別居中や離婚前にひとりで子育てをしている実質ひとり親家庭の多くが、児童手当などの公的手当や支援を得られず、経済的、精神的に苦しい状況に置かれていることが、支援団体などの実態調査プロジェクトチームの調査でわかった。

また、その7割が新型コロナウイルスの影響で収入が減少、得られる支援から漏れて困窮が深まっている。相談窓口でも「離婚していないと助けられない」と告げられるなど、社会的に孤立している実態が浮き彫りになった。関係者は「制度の周知が進んでいないことが課題だ」と指摘した。

調査は、認定NPO法人フローレンスなどでつくる「別居中・離婚前のひとり親家庭」実態調査プロジェクトチームがウェブで実施したもので、実質的にひとり親状態にある全国の262世帯から回答を得た。

厚労省で、調査結果の記者会見があった。別居中・離婚前で子どもと同居しながらも、児童手当をはじめとしたセーフティネットをはく奪されたひとり親が多くいる。

その多くは収入200万円未満で、7割以上が離婚の意思があり、6割以上が1年以上別居している。受給者変更の制度があるが、別居中の相手の合意が必要で、DVを受けて別居している相手に居所を知られる可能性もあってハードルが高いとした。