「ザ・都会」なラグジュアリーな空間で、スイーツの乗った三段重ねのタワー的なものが出てきた。(写真はイメージ/写真提供:photo AC)

生きる力:いつか恩を返したい

ジェラート ピケだけではない。社会に出て出会った人たちはよく、さりげなく私にプレゼントを贈ってくれた。

 

ある時、かおりさんが待ち合わせの場所に書店を指定した。落ち合うと、いろんな売り場を案内してくれて、考えながら本を選んで、それらをプレゼントしてくれた。かおりさんは、そうしていつもよくしてくれるのだが、私は癖で、喜ぶよりまず先に「申しわけない」という反応をしてしまう。かおりさんは言った。

 

「あなたはまだ、たくさん受けないといけないんだよ。返そうとか思わなくていい。いつか余裕ができたら、次の世代に還元すればいいんだから」

 

ぴろさんという友人は、「ヒオカちゃんをアフタヌーンティーに連れていきたい」と言い出して、その場ですぐにホテルのアフタヌーンティーを予約してくれた。

「ザ・都会」なラグジュアリーな空間で、スイーツの乗った三段重ねのタワー的なものが出てきた。こんなの雑誌でしか見たことがない。フォークやナイフの使いかたはぎこちないし、こういう場所のマナーもわからない。オロオロしている私の横で、ぴろさんは無邪気に「おいしそう〜!」と言って、慣れた手つきでパクパク食べはじめた。その様子をちらちら観察しながら、私も見よう見まねで、三段タワーに挑んだ。

バイオリンやピアノを演奏する外国人が、ラウンジ内を陽気にぐるぐる回る。なんていうか、「非日常」であった。

夢のような時間が過ぎると、ぴろさんは、「自分が持つから〜」と言って、さっと奢ってくれた。焦った私は、「えええ? お誕生日いつ? 必ず返すから!」と言った。ぴろさんは言った。

「返そうとか、思わなくていいんだよ。自分だってもう少し若い時は、色んな人にご飯に連れていってもらったんだ」

初期から私の書く文章を読んでくださっている二人の方は、何かとギフトを贈ってくれる。どれも自分では絶対に買わない/買えないようなものばかりだ。