不足していたエリート育成システム

「ベスト16」という成果をもって日本がこのまま強くなっていくことなどありえない、と私は思っていました。

日本の若い選手たちのサッカーに取り組む環境は、本当に整っているのだろうか? 強くなっていくためには、もっと学ぶべきことがあるのではないか。

日本にはない育成方法がヨーロッパにはありました。

FCバルセロナやレアル・マドリードをはじめ世界の名門と言われるクラブでは、幼いうちから子どもの才能を育てていく育成システムを積極的に取り入れていました。

田嶋幸三・日本サッカー協会(JFA)会長。会長就任の2016年以降、世界基準をめざして数々の改革を断行してきた(写真:『批判覚悟のリーダーシップ-日本サッカー協会会長秘録』より)

フランスには国立フットボール養成所(INF:通称クレールフォンテーヌ男子部門)があり、国家が率先してサッカーのエリート教育に取り組んでいました。

幼稚園に始まり一人一人の子どもの発育に応じて、サッカーの技術だけではなく、人間の基礎となる素養、マナー、考え方、哲学、コミュニケーションの技術までしっかりと身につけさせていくのです。そうやって育ってきた優れた選手たちを相手に戦わなくてはならない現実を、日本サッカー界はしっかりと見つめる必要があると思いました。