「エリート」という言葉に違和感を覚えて
一方、日本の若手の選手たちといえば、サッカー以外の時間を自由気ままに過ごしています。
同じ時間を他国の若いタレントたちはどう過ごしているのか。それぞれの学校や日常生活の中で、いったい何を教わり、学んでいるのか。そこから差が生まれてくるのは自然なことではないだろうか。
日本の若い才能を育成していくためには、何をどうすべきか。
ヨーロッパのような育成システムを日本に合う形にして導入する必要があると考えた私は、そのプランを具体化していく方法についてJFAの中でさまざまな視点から検討を重ねていきました。
そして一つのトライアルとして、新育成システムに取り組むことにしたのです。
諸外国の優れた「選手育成システム」からエッセンスを学び取って、フランスから講師を呼び「サッカーのエリート教育」として中学生を対象とした寄宿舎制を採り入れよう、という結論にまとまりました。
その際に、「キッズエリート」という言葉をいち早く提唱したのは川淵JFA会長(当時)でした。
正直に言うと、技術委員長だった私は当初、「エリート」という言葉を使うことに「反対です」と川淵さんに意見しました。
「エリート」という言葉に、何か違和感を覚えたのです。
日本でその言葉を使うと、必要以上に誤解されたり拒絶されたりするのではないかという心配もありました。
私の意見に対して川淵さんは「いやそうではない」と正面から断言したのです。