源実朝の終焉の地、鶴岡八幡宮へ
『鎌倉殿の13人』では、源頼朝と北条政子の次男として生まれ、12歳で征夷大将軍の座に就いた源実朝を演じます。早くに父を亡くし、二代将軍となった兄・頼家も追放されたことで第三代鎌倉殿に据えられ、責務を果たしている最中に28歳という若さで暗殺されてしまう。
一言で言えば、儚く悲しい人生を送った人ということになるのでしょう。台本を読んで、一生懸命生きていただけなのにパワーゲームに巻き込まれて命を落とす、本当にかわいそうな人だという印象を受けました。
役作りのために、とにかく実朝について書かれた資料や論文を読み込みました。兄の頼家は思ったことを口に出し、やりたいことをやるタイプですが、実朝はそうじゃない。静と動で言ったら完全に「静」の側の人間です。文献では、弱々しく政治に興味がない人物として描かれていることが多いようですが、実際は自分の考えがしっかりあるけれど、表に出さなかっただけなのでは、と……。
三谷さんも実朝には深い思い入れがあるそうで、オファーをいただいた昨年の春には一緒に鎌倉へ行き、お墓参りをしてきました。最期を遂げた鶴岡八幡宮でご祈祷を受けて、由比ヶ浜を散歩して。その時に実朝の人物像について話をしましたが、三谷さんも「彼はすごく賢くてピュア。本当にいい子だったんだと思う」とおっしゃっていましたね。
実朝を演じる時は意識的に声量を落としているので、ドラマを観た方は「本当にこの子で大丈夫なの?」と、頼りなく思うかもしれません。しかし、ある出来事をきっかけに言動も変化していく――その成長物語にぜひ注目してほしい。
和歌が好きで、あんな殺伐とした時代に生まれなければ穏やかに過ごしていたであろう彼の生涯を思うと、無念でなりません。観てくださる方々にも彼の人生を感じていただき、応援してもらえたら嬉しいです。