おばあちゃん子だった氷川さん

その翌年からスタートしたのが『旅の香り 時の遊び』(テレビ朝日系)という紀行番組。それまで、お笑い芸人さんがMCを務めるバラエティ番組専門の放送作家だった私にとっては、野際陽子さんMCの落ち着いた旅番組は”無縁“と言ってもいいものでした。

ところが、知り合いの放送作家が熱心に誘ってくれて、番組プロデューサーに、とりあえず話を聞きに行ったとき、「VTRコーナーで氷川きよしさんの出演が決まっています」と……!! 私はその場で「やらせていただきます」と手を挙げたのを覚えています。

野際さんと、以前から親しくしていた中井美穂さんがスタジオを仕切り、主に俳優さんたちが“旅”に出て下さる番組の後半、氷川さんが東京近郊を、いわゆる“街ぶら”するコーナー。

おばあちゃん子だった氷川さんが、街で年配の女性を見かけ、「かわいい!」「あのおばあちゃん、僕のタイプです」と言ったのは、忘れられないコメントです。

「お元気ですね」とか「お若いですね」ではなく、「かわいい」と言われたその女性は、みるみるうちに少女のような表情に。さらに、稀代の貴公子から「僕のタイプ」と言われたわけですから、もしもそのとき、前述の健康番組のように“血液検査”をしていたならば、通称・幸せホルモンの「セロトニン」の数値がいっきに上昇したのではないかと思います。

そんな氷川さんは、たまにスタジオで野際さんや中井さんと絡むこともありましたし、期首特番の際には、御両名と京都旅行をしたり、ゲストにみえた黒柳徹子さんと都内のロケに出たりしてくださいました。

皆さん、本当に氷川さんのことが本当に大好きで、大好きで……。氷川さんの新曲に因んで野際さんと中井さんが時代劇に挑戦したり、黒柳さんがギャルに変装して氷川さんとデートをする企画をしたりと、こちらの“むちゃ振り”にも「氷川さんのためならば」「氷川さんと一緒ならば」と引き受けてくださったことも大切な想い出です。