なぜ「となりのかいご」を立ち上げたのか?

川内 一生懸命介護するあまり、その相手をものすごく強く思うがあまり、自分の生活を壊し、ついに親を憎むに至る人を僕は何度も見ています。介護職として、福祉の人間としての無力感をすごく感じます。

―― そうなんですか。親に暴力を振るってしまう人も実際に見ましたか。

川内 何回も見ました。親御さんがデイサービスにいらしたときや、訪問入浴のために訪問したときには、何とか間に入ってフォローはできます。本当に残念ですけれど、息子さんが親御さんに手を上げている、その現場に訪問することもありました。

ピンポーン、とベルを鳴らしたら、もう殴られているという状態で。割って入って「やめましょう」と止めることはできる。けれども、私たちが帰ったあとにまた同じことが繰り返されることは十分想像できて、「なんとかできないものかな」と。

川内「介護をする側の支援」が必要だと思って、となりのかいごという団体を立ち上げたわけです」(写真:大槻純一)

―― なるほど。

川内 これは、「介護をする側の支援」が必要だと思って、この、「となりのかいご」という団体を立ち上げたわけです。

でも、どうやればこの事業を続けていけるんだろうと思ったときに、たまたまある会社さんから「社員が親の介護に悩んでいるので、相談に乗ってくれないか」とご依頼をいただいて、セミナーをしたり個別相談をしてみると、まさに「親の介護を始めたけれど、仕事や自分、家族が犠牲になって困っている」と訴える人がたくさんいらっしゃって。

この人たちを支援することで何とか事業として回しながら、やっと形が見えてきたかな、というのが今の状態なんですよ。