自分の作品を扱った個展が開催されているマリさん。しかし、描いた作品の管理に興味がないため、収集に大変苦労したそうで――。(文・写真=ヤマザキマリ)

自分の作品に対して執着がない

私が客員教授を務めている八王子市の東京造形大学で、10月末から「ヤマザキマリの世界」という個展が開催されている。

とはいえ、学生たちの課題というコンセプトで企画されているので彼らの作品というべき展覧会だが、この企画を開催するにあたって、『テルマエ・ロマエ』などこれまでの漫画の生原稿から子供時代の絵画、そして最近描いた油彩の肖像画まで、あらゆる自分の作品を収集せねばならず、これが容易ではなかった。

というのも、私は自分の作品の管理に興味がない。要するにだらしない。掃除は好きなくせに、整理したものの場所を覚えていなかったりする。

そもそも私は昔から自分の作品に対して執着がない。だから、自分の個展をしてみたい、などと自発的に思ったこともない。学生時代も油絵やデッサンを誰かに欲しいと言われればあげてしまったし、自分の漫画が単行本になっても、読み直すと欠点や粗ばかりが気になるので手に取ることができない。出版社から届く自著の見本もすべて周りにあげてしまって、手元には1冊も残っていない始末。