ひねくれた考えが私の頭をよぎった

気になる不調は特になかったものの、大きな病気が見つかる不安はあった。周囲には毎年人間ドックに入る猛者がゴロゴロいて、みんなこんな不安な気持ちを年イチで経験しているのかと感嘆した。調べるまでもなく、心臓が強い。

どうせやるなら徹底的にやろうと思い、「スーパー人間ドック」コースに申し込んだ。ドック(船渠)とドッグ(犬)は別ものと知っていても、「スーパー」がついた途端、私の頭に「ものすごく人間のような犬」が想起された。「スーパー人間ドッグ」と独り言ち、笑いが漏れる。真剣度が足りない。

スーパーにしたせいで、検査は2日に及ぶ羽目になった。初日は、心電図を測るための装置を乳房の下あたりに5つほどくっつけて、まさにスーパー人間ドッグになった気分。

翌日は朝から検査に次ぐ検査で、採血では血管が見つからず、何度か針を刺されて痛い思いをした。婦人科系の検診はもっともこたえた。女医とはいえ初対面の相手に股を開き、ブラシのような棒を突っ込まれて膣の壁面を擦り落とされたり、若さ漲る看護師に上半身だけ弛んだ裸を晒し、乳房をこれでもかと潰されたりするのだもの。

相手は日常業務だが、こちらの心と体はそれなりにダメージを受ける。医学がどれだけ進歩しても、女の検査は野蛮なままなのではないかと、ひねくれた考えが私の頭をよぎった。