スポーツって難しい
初場所(1月)に3回目の優勝をした御嶽海は場所後に大関になり、秋場所(9月)に大関から陥落。九州場所で関脇の地位で、大関に戻るための「10勝」をあげられないどころか、6勝9敗。初場所は関脇からも落ちることになる。
春場所(3月)優勝した関脇・若隆景は、86年ぶりの新関脇優勝を称えられた。二桁あげれば大関への足がかりといわれたが、今場所は8勝7敗で終わった。しかし、年間で57勝して単独の年間最多勝となった。
夏場所(5月)優勝の横綱・照ノ富士は膝の手術後のリハビリ中で九州場所は休場。
名古屋場所(7月)優勝の前頭2枚目・逸ノ城は九州場所で4勝11敗で負け越し。
秋場所(9月)37歳10か月で昭和以降最年長で優勝した小結・玉鷲は、九州場所では6勝9敗で負け越し。
しかし、11月16日に38歳となった玉鷲は、14日目に前頭8枚目・宝富士を左手だけのはず押しで一気に突き飛ばして勝ったのはすごかった。来年の迫力に期待したい。
九州場所前に発行された『NHK G-Media大相撲中継』(『サンデー毎日増刊号』毎日新聞出版発行)の「大相撲裏話」に横綱・朝青龍の甥である豊昇龍と横綱・大鵬の孫である王鵬が、同期入門でライバルだったとある。そこには、「二人の初対戦は平成30年初場所の前相撲だった。納谷(現・王鵬)が豊昇龍をすくい投げで破った。豊昇龍は土俵に座り込み、悔しい表現を見せていたのが印象的だった」と書いてあった。その後、豊昇龍は王鵬を引き離し出世した。今場所12日目、優勝争いにからみ、初めて幕内で豊昇龍と王鵬が対戦。王鵬がはたき込みで勝ち、今度も豊昇龍が土俵に座り込んで悔しそうだった。この二人の対戦は今後何度も見られそうで、楽しみだ。
新入幕として期待された前頭15枚目・熱海富士は、赤い廻し姿で赤いタオルで顔を拭き、連日鼻血まで出して頑張ったが、4勝11敗で終わり残念だった。
元大関で新型コロナウイルス感染予防のガイドライン違反による休場で幕下にいる朝乃山は6勝1敗。現在、幕下4枚目なので初場所に十両に登場する可能性は高い。しかし、先場所も1敗していて、順調に大関まで戻れるか不安になってきた。
安定感のない大相撲の1年だった。
難病で亡くなった私の父は、目に障害が出る前に最後に読んだ本がミステリー『土俵を走る殺意』(小杉健治著、新潮社刊)だった。母も相撲が好きだった。入院中の母に見せようと、私が『大相撲力士名鑑』(ベースボール・マガジン社刊)を書店で買っている時に母は亡くなった。
私は大相撲ファンだった両親のDNAを受け継いでいることもあり、横綱、大関が優勝できず、怪我人が多く、安定感がなくても、来年も大相撲を見続ける。
「私はどんなことがあっても大相撲をあきらめないぞ!」と、力みながら原稿を書きつつ、サッカーのワールドカップカタール大会をテレビで見ていたら、日本はコスタリカに1点を取られ負けてしまった。スポーツって難しい。