非対称性のバイアス

私たちは誰しも論理的に考えることを妨げる認知バイアスから逃れることができません。非対称の世界観をもたらす認知バイアスを、ここでは非対称性のバイアスと呼びます。

非対称のバイアスとは、この場合「自分と他人の非対称性」から来ます。つまり、他人が自分を見る時の認識と、自分が自分自身を見る時の認識に、大きなギャップがあるということです。

例えば、以下のようなことはないでしょうか?

・ 他人のことは十把ひとからげに一般化して考えるのに、自分は他人とは違う特殊な存在だと思う(いわゆる「レッテル貼り」がこれに相当します。他人には安直に「あの人は※※派だから……」などレッテルを貼るのに、自分がそう言われると、「自分はあの人たちとは違うから」と猛烈に反論する)。

・ 他人の言い訳は「しょうもない」と思うのに、自分はしゃあしゃあと同じような言い訳をする(「時間がなかった」が代表的でしょう)。

私たちが「自分は特殊だ」と思うバイアスは強烈です。そしてさらに悪いことに、大抵の場合、その自覚がないのが最大の問題です。だからそれを他人から指摘されると、猛烈に反論したくなるのです。

次に、なぜこのような非対称性バイアスが生まれるのかを「具体と抽象」の観点から考察してみましょう。これにはどういう場合に私たちが具体的に物事を観察し、どういう場合に視野が狭くなったり広くなったりするかを考えてみると、その答えが出てきます。