かつて林さんにも「人から頼りにされていない」ことに焦っていた時期があったそうで――。2022年8月撮影(写真:本社写真部)

 

22年7月1日、日本大学の理事長に就任した作家・林真理子さん。就任後には体制を一新、私立大の理事の9割が男性と言われる中、自らの意向に沿って林さんを含めた新理事22人のうち4割に当たる9人を女性にするなど、精力的に大学改革を進めています。大学の理事長以外にも各種選考委員や役職を務める林さんですが、かつては「まったく人から頼りにされていない」ことに気づき、焦っていた時期もあったそうで――。

若気の至り

20代、30代というのは、自分が何者かもわからないし、みっともないことをいっぱいしてしまう時期ではないでしょうか。思い出すだけで顔が赤くなるようなことがたくさんあります。

小説を書き始めて直木賞の候補にもなった頃、すごく好きな人がいました。今でも本当に大好きだったなあとしみじみ思い返すような人です。好きが高じていろいろと迷惑をかけました。

当時の私は、その彼とのことで週刊誌に追いかけられたいと思って、ユーミンとの対談でわざわざ指輪を見せびらかしたり、「そろそろ結婚したいです」と公の場でアピールしたり。一度でいいからスクープされてみたかった。

「男性関係で尾行されるってどういう感じ?」

恋愛感情に加えて、普通の女の子ならではの好奇心を止めることが出来なかったのです。当時の私の愚かさといったら、いろいろ叩かれても仕方なかったと思います。本当に恥ずかしい……。今の知恵があったら絶対にやらないことばかりやっていました。

結局、写真を撮られて記事になり、それがトドメとなって、彼から別れの手紙が送られてきました。私は当時マンションの四階に住んでいたのですが、彼に電話をして大騒ぎしました。
「この手紙ってどういうこと? 今から窓から飛び降りて死んでやる」
「君のそういうところが耐えられない」

さらに、こっぴどくフラれました。

のちに直木賞を獲った受賞作のうちの一つ「京都まで」のモデルになった人です。書かずにはいられなかった。ものすごく傷ついたのに、それをまた小説にするのが私のいやらしいところ。ネタになればまあいいか、と思うしかなかった。その彼にはあとで何度か会って、迷惑をかけてしまったことを平謝りしたものです。