末期がんから生還した人たちは、がんになったことに感謝していた
私は末期がんが完治した人たちを少なからず知っています。その方たちに共通する点がひとつあります。
普通、治らない難治がんが完治するという奇跡的な出来事があれば、完治したことに対して喜んだり、感謝したりすると思いますよね。
でも、彼らはそうではなかったのです。末期がんから生還した人たちは、がんが治ったことに感謝するのではなく、がんになったことに感謝していたのです。
これは、私にとって驚くべきことでした。彼らは、自分ががんになったことで、「自分の本当の使命がわかった」「人を愛し、自分を愛せるようになった」「人に貢献できる自分に変われた」と口をそろえて言われました。「がんが治ったことよりも、そういうことのほうが自分にとっては大事なことだった」と断言するのです。
人生を生きることは、苦難や困難の連続かもしれません。病気もそのひとつです。
しかし、そうした苦難や困難があるからこそ、我々は人生の真の意味を知り、自分自身のこころを成長させることができるのではないでしょうか。
ましてや、死という人生最大の危機を目の前にして、人は大きく成長できる存在であると私は思っています。
※本稿は、『また、あちらで会いましょう』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
『また、あちらで会いましょう』(著:四宮敏章/かんき出版)
人生最期の1週間がどんなふうに過ぎていくか知っていますか? 奈良県立医科大学の緩和ケア医が発信する、YouTubeチャンネル「ドクタートッシュ 緩和ケアの本流」で亡くなる前の1週間のプロセスを解説した動画を投稿したところ、多くの反響が寄せられています。人が死に対する恐怖心を抱くのはその実情を知らないからではないか、死を知ることから生きることを前向きに考えられるようになるのではないかと感じたという著者。最期まで自分らしく生きるために、身近な人の死を受容して生きていくために、不安の正体を因数分解しながら、前向きに人生を歩んでいくための言葉を1冊にまとめました。