40代の子宮頚がん患者の例

特に印象に残っているエピソードをご紹介したいと思います。私が大学病院の緩和ケアチームで経験した患者さんの例です。

40代の子宮頚がんの女性でした。大学病院でがんの摘出手術を受け、その後化学療法をしましたが、間もなく再発。再度化学療法を続けたのですが、進行を食い止めることはできず、腹膜の転移が悪化し腸管破裂を起こしてしまいました。緊急手術で一命は取り留めたものの、抗がん剤治療は中止になってしまいました。

その後も腹膜転移は悪化し、とうとう腸閉塞に。彼女は嘔吐を繰り返し、腹痛で夜はまったく寝られない状態となりました。そして症状緩和目的で緩和ケアチームにやってきました。

彼女はこれまでがんと闘ってきたけれど、もう治る見込みはないことを自覚していました。本人の要望は、つらい症状を取ってもらい、何としても自宅に帰りたいというものでした。

私は医療用麻薬、ステロイドなどの薬物を点滴で投与しました。すると、症状が緩和され、彼女に笑顔が戻ってきました。残念ながら、食事が取れるまでには至りませんでしたが、10日後に退院し、在宅医、訪問看護師に彼女を委ねました。家では穏やかに家族とともに過ごされ、2週間後、自宅で永眠されました。

亡くなられた後、ご主人から入院中の日付で携帯電話に残されていたというメッセージを見せていただきました。そこにはこう記されていました。

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いままでありがとうございました。最後まで迷惑かけたけどゴメンね~なんのお役にも立てませんで元気で頑張ってください

親より先に逝くのが心残りなんやけどヒロくん、頼むわな

元気でな 大好きなカズくん

両親へ

色々迷惑お掛けしました

一生懸命してくれたのに親孝行の一つもできなくて申し訳なく思っています

先に逝くけど待っとくわなぁ

大好きなお母さんお父さんへ

おっちゃんおばちゃん色々ありがとう

大好きやで元気でいてなぁ 天国で見守っています

皆さんありがとうございました