幕府を滅ぼせ、と言えないなら

著書では何度か書いていますが「幕府」という言葉は中世を通じてありません。室町時代の物知りの禅僧がたまに使っていたくらいです。

江戸時代には幕府ではなく、柳営という言葉が用いられていた。ではなぜ幕府というのかというと、明治になって近代歴史学が始まったときに、「鎌倉の武士の政権」といちいち言うのは面倒くさいので、将軍の政府を示す概念として、幕府という言葉が使用されるようになったのです。

そこで考えてみてください。

もしも後鳥羽上皇が「鎌倉のあの武士の集まりは気にくわない。いまのうちに滅ぼしてしまわないと朝廷に害を及ぼす危険があるな」と考えたとして、「あいつらを倒せ」と命令をしたとしましょう。

「幕府を滅ぼせ」と言えないなら、どんな表現を用いるのが適当か。