ドラマでは御家人の心をうつ演説をした政子でしたが…(『少年日本史』、学齢館:編・刊/国立国会図書館デジタルコレクション

小栗旬さん演じる北条義時、大泉洋さん演じる源頼朝ら、権力の座を巡る武士たちの駆け引きが三谷幸喜さんの脚本で巧みに描かれるNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(総合、日曜午後8時ほか)。12月11日の放送回では、深まる京と鎌倉の対立が描かれました。朝廷の象徴である内裏が焼け落ちると、後鳥羽上皇(尾上松也さん)は再建費用を日本中の武士から取り立てることを決断。しかし義時は政子(小池栄子さん)と大江広元(栗原英雄さん)の支持を得て要求を先送りにし、さらに上皇との関係が悪化したことでいよいよ……といった内容が展開しました。

一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生が気になるあのシーンをプレイバック、解説するのが本連載。第18回は「どうしても見過ごせなかったこと」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!

政子の演説

次回、最終回を迎える『鎌倉殿の13人』。前回では悪化する鎌倉と京の関係が描かれ、いよいよ上皇が北条義時追討の院宣を有力御家人に出すことに。

危機を迎えた鎌倉では御家人を前に北条政子が演説。大江広元が書いた「右大臣の御恩は山より高く…」という有名な一文を一度読み始めたものの「本当のことを申します」と、上皇の狙いが鎌倉ではなく義時の命であること、対して義時は命を差し出す覚悟をしていることなどを語りました。さらに

「選ぶ道は二つ。未来永劫西のいいなりになるか、戦って坂東武者の世をつくるか。ならば答えは決まっています」

「向こうはあなたたちが戦を避けるために執権の首を差し出すと思っている。馬鹿にするな。そんな卑怯者はこの坂東に一人もいない。そのことを上皇様に教えてやりましょう」

と喝破。心を一つにした御家人たちは一斉に雄たけびを上げる――というシーンが描かれました。そしてSNSなどでそのシーンについての感想をみれば、“圧巻”や“鳥肌”など、賞賛する言葉で溢れています。

ドラマはドラマとしておもしろければ良い。だから、歴史学から見たら少々首をひねる解釈があっても、それに目くじらを立てるのは控えたい。ぼくはずっとそう言ってきました。

でも、今回のお話についてはドラマの中だとしても矛盾しているし、学者の立場からどうしても指摘しておきたい、と感じました。今回はそのことについて書いてみたいと思います。