大河ドラマの“わきまえ”

承久の乱が起きてからおよそ800年にわたって、武士たちも、歴史研究者も、後鳥羽上皇の「義時を討て」という命令はつまり「鎌倉幕府を倒せ」という意味であると捉えてきました。

そうした定説のなかの定説を覆すのは、やはり慎重にしてほしい。ドラマの一場面とはいえ、あらゆる角度から検討して熟慮に熟慮を重ねるとともに、どこかで「史実とは違います」という補足をあらためて加える、といった対応も検討する必要があるのではないでしょうか。

また、今回のドラマで日陰の道を歩き続けてきた義時が、急に「自分が命を差し出して幕府を守ろう」と言い出したのも、首をひねってしまう。鎌倉を思うあまり、そして息子・泰時の成長などがあってだと思いますが、それにしても「もう少し思慮してもよいのでは…」とも。

ドラマならではのオリジナリティを、という意図も理解できますが、一貫した解釈も大切だと思います。作り手自ら、積み上げてきた義時の成長を否定してしまってはとてももったいない。

ドラマが盛り上がっているだけに、今回の記事には「水を差すな」「無粋なことを言うな」といったご意見をいただくかもしれません。しかし細かな解釈はいろいろあったとしても、根本の部分では史実を重視し、尊重する。それが大河ドラマの“わきまえ”だとも思うのです。