年に一度の“奥さん孝行”

 もう四半世紀以上前のことになるのですが、お正月のハワイ取材で、芸能人よりも芸能人らしい前忠さん御夫妻をお見かけしたことがあります。

ホノルル空港 写真◎AC

 私はそのとき、日本テレビの『ザ!情報ツウ』の仕事で、井上公造さんをはじめ、「芸能界・ウワサの地獄耳」というコーナーの特別編をハワイでやることになり、ホノルル入りしていたのです。
 そういえば、「お正月のハワイ」の映像をワイドショーで見かけなくなった…と思われる方も多いことでしょう。原因はコロナではなく、それよりももっと前に予算削減のため、ワイドショーのハワイ取材はなくなっていたのです。最後まで一人で続けていらしたのが井上公造さん。それもテレビ局から予算が出ていないのに行っていらしたように思います。

 私がハワイに行った四半世紀以上前は、お正月のハワイ中継は当たり前。ホノルル空港の団体出口と個人の出口にリポーターさんやディレクターらがスタンバイし、日本からの便が到着するたび、「誰が、どっちから出てくるか」を全員で情報共有しながら、インタビューをしていたのです。私ごときにまで飛行機代やホテル代が出ていたのですから、どれほど“いい時代”だったことでしょうか。

 そのとき、ホノルル空港でお見かけした前忠さんは奥様を連れ立って、カートの上にルイヴィトンのスーツケースを4~5個も載せて、芸能人以上に芸能人らしい出で立ちだったのです。

「あぁ、あれは年に一度の“奥さん孝行”だったんですよ」と、フジテレビのスタッフさんが教えてくれました。何かあれば局から連絡が入り、取材に出たり、聞き込みをしたりして、朝も夜もなかった前忠さんは、最高級のホテルを自腹でリザーブし、他のスタッフよりも長めにハワイに滞在し、奥様を労っていらしたというのです。愛妻家だったのですね。

ワイキキビーチの夜 写真◎AC

 そんな奥様が「前忠さんの衣装をすべて担当していらした」とも別のスタッフから聞きました。「ラフなファッションのときも『アルマーニ』などをお召しでしたよ。ネクタイはいつもブランド物、ジャケットは肌触りが良くて、画面越しでも上質なものだとわかりました」と。

 ファッションだけではなく、「男性のグレイヘアブームの火付け役だった」と振り返る古株のスタッフさんもいらっしゃいました。「近藤サトさんよりも前の話?」と私が訊ねると、「全然、前ですよ」と。グレイヘアを美しく保つヘア化粧品の雑誌の広告に前忠さんが出ていらしたというのです。本当にオシャレな方だったのですね。