子どもの絵本に親が感激して涙が出るとは

室内では、おもちゃとともに夢中になっているのが絵本だ。

出会いの機会は、「生後4カ月健診」に行った先で文京区の施設が作ってくれた。今、全国の自治体で取り組みが進みつつある「ブックスタート」運動である。生まれて初めて絵本を開く楽しい体験と、絵本そのものをプレゼントしようという活動で、1992年にイギリスのバーミンガムで始まったそうだ。

日本では「NPOブックスタート」の呼びかけにより市民と行政が協働で行い、現在、全国1065の市区町村が参加している。

健診では、計測(身長・体重・頭囲)、小児科診察や発達などの診査が行われたあと、いくつかの選択肢の中から2冊の絵本を選んで持ち帰った。

『じゃあじゃあびりびり』(まついのりこ)と、『がたんごとんがたんごとん』(安西水丸)。どちらも、乳児にはとっつきやすいオノマトペが題材になっている。

このとき、人間が初めて本を開く瞬間を目撃した。息子の場合、まず本のページを開くという行為にワクワクしている様子で、はじめのうちは、何度も何度もめくっていた。これでいいのだ。

1カ月、2カ月と経つうちに、勢い余って破いたり、破ると元に戻らないことを覚えたり。1歳を過ぎる頃には、急場しのぎに段ボールで作った書棚に、絵本の“蔵書”が30冊以上並ぶようになった。こうなるとお気に入りができる。

息子は、食べ物が描かれた絵本を読んでくれ、とばかりに無言で持ってくる。2歳になると、擬人化されたおにぎりさんやバナナさんが、バスに乗り込み弁当が完成してゆく絵本を見ると、おにぎりをつかむしぐさをして「おいしー!」を連発。私に食べさせてくれるしぐさまで自然と覚えていった。

絵本とともに成長していく姿を見るのは、本当に楽しい。子どもが言葉を覚えるたびに、子どもの絵本に親が感激して涙が出るとは思わなかった。

お誕生日の記念写真(写真:著者)

※本稿は、『56歳で初めて父に、45歳で初めて母になりました - 生死をさまよった出産とシニア子育て奮闘記』(ワニ・プラス)の一部を再編集したものです。


56歳で初めて父に、45歳で初めて母になりました - 生死をさまよった出産とシニア子育て奮闘記』(著:中本裕己/ワニ・プラス)

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