根津は大人の住む町

「根津に住み始めたころは快適だったけど、子どもができて、『ここは大人の住む町だわ』と考えが変わったの。公園が小さくて少ないし、交通量が多くて歩道が狭いから、家族で散歩するにも1列にならなくちゃいけないでしょ。それから歩道の段差が多くて、ベビーカーで出歩くにはストレスが多すぎるのよ」

では、いま暮らす綾瀬はどうか。

「道が広い、坂がない、ベビーカーで移動してもスムーズで段差がほとんどないから、ストレスなしね。横断歩道でガクンとなる段差がないのよ。若い家族とお年寄りが多くて、みなさん気さくに声をかけてくれるし、とてもやさしいわ」

妻の声が弾む。私もそれは実感していた。

『56歳で初めて父に、45歳で初めて母になりました - 生死をさまよった出産とシニア子育て奮闘記』(著:中本裕己/ワニ・プラス )

息子は、2022年4月に近所の区立保育園に入園することができてから、広い園庭でのお外遊びが大好きになり、真っ黒に日焼けした。

「葛飾区の保育園まで長い道のりを通っていたときにも、大雨や寒風が吹きすさぶ日は大変だったけど、周りの人に救われた。途中で、都立葛飾ろう学校の前で交通整理をしている女性が、毎日、声をかけてくれた。『きょうは笑ってくれるのね』って、息子の成長を見守ってくれて……」