「これまで、歌う役は意識的に避けてきました。歌うとなれば、プロのロックボーカリストである世良公則の部分が出てしまい、芝居をするうえで邪魔になる」(撮影:岡本隆史)
日本のロック界に鮮烈な印象を与えたデビュー以来ミュージシャンとして活躍し続ける一方、俳優としても数々の映画、ドラマに出演してきた世良公則さん。2021年はNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』でジャズの名曲を熱唱し、大きな話題となりました。そんな世良さんにとって、これまでの日々、そして、これからは――。
(構成=福永妙子 撮影=岡本隆史)

22歳のときに夢見た光景が

NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で歌った反響は大きかったですね。僕が演じたのはジャズ喫茶のマスター。戦前・戦中・戦後と時代が移り変わるなか、一時は敵国のものとして許されなかったアメリカの音楽を愛し、進駐軍のパーティーでジャズの名曲「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」を歌う。

敗戦後、人々が立ち上がって懸命に生きようとするドラマのストーリーと相まって、みなさんの心に響いたようです。音楽の力というものを、あらためてドラマに教えてもらった気がしました。

これまで、歌う役は意識的に避けてきました。歌うとなれば、プロのロックボーカリストである世良公則の部分が出てしまい、芝居をするうえで邪魔になる。だから、ミュージシャンである自分と、俳優である自分を明確に分けていたのです。

ただ今回は、コロナ禍でみなさんが喪失感や失望感をいだくなか、歌うことで伝わるものもあるのでは、と考えました。同時に、敵国のものとされた音楽を愛し続けた姿が、僕自身に重なる部分もあったのです。