『ちむどんどん』
4月11日から9月30日まで放送された『ちむどんどん』も、家族愛が大きなテーマだった。
黒島結菜(25)が演じた主人公・比嘉暢子の兄・賢秀(竜星涼)が問題人物だったのはご記憶の通り。母・優子(仲間由紀恵)に無心を繰り返したり、無謀な投資話に乗ったり。
もっとも、優子や暢子、その姉である良子(川口春奈)や妹の歌子(上白石萌歌)は賢秀を信じ、支え続けたから、最後には養豚場主として成功を収める。家族が見捨てていたら、賢秀はどうなっていたか分からない。
優子と暢子、良子、歌子も物心両面で支え合い続け、作品が家族愛を訴えようとしているのが伝わってきた。
父・賢三(大森南朋)の急逝後、小学5年生だった暢子(幼少期・稲垣来泉)は自分が大叔母の大城房子(原田美枝子)に引き取られることで、家計を楽にしようと考えたが、それを土壇場で思いとどまる。どんなに貧しくても家族と別れたくないと考えた。賢秀らも泣きながら止めた。家族愛の深さを象徴するシーンだった。
勿体なかったのは暢子が視聴者側に誤解されやすいキャラクターになってしまったところ。裏表のない天衣無縫なヒロインだったが、その分、他人の気持ちを推し量るのが苦手だった。
例えば小5のときに沖縄で出会った青柳和彦(宮沢氷魚)と10年ぶりに再会し、その恋人の大野愛(飯豊まりえ)とも友人になるものの、自分が和彦と愛し合い、愛を裏切る形になってしまった。
暢子にとって愛は上京後に出来た唯一の友人。『泣いた赤鬼』などを読んで育つ日本人は創作物の友情に高貴性を求める。友人から恋人を奪うというのはプライムタイムのドラマならある話だが、観る側が清廉さを望む朝ドラでは厳しかったのではないか。