「オチ」はつかないはずだった

どっと疲れた気分になってあたりを見ていると、隣のテーブルでランチを食べている看護師の制服を着た2人組のほうに、別の看護師が近づいてきた。

「これ、ドクター・グリーンのためのゲット・ウェル・カードなんだけど……」

隣の2人組は「OK」と言って差し出されたペンとカードを手に取り、大きなカードの中にサラサラとメッセージを書いた。2人が書き終えると、若い看護師がわたしにもカードを差し出して言った。

「よかったら、あなたも」

「いや、わたしは……」

と口ごもったわたしに看護師が言った。

「わたしたちの病棟のドクターががんで入院したんです。できるだけ多くの人にメッセージを書いていただきたいので」

いや、わたしは医療従事者ではなく患者の家族です、と言いたかったが、そうしたら、なんでこんなところに座っているんだと言われてしまいそうだ。

しょうがないので、一番端っこのところに、「お大事に」と小さく書いてカードを戻した。

「ステージ4らしいよ」

「まだ小学生のお子さんがいたよね」

隣のテーブルの看護師たちがそう話す声を聞きながら、わたしは再びパソコンを開いた。

「オチ」はつかないはずだった。断片的日常を書くつもりだったのに、このところわたしの生活は一つの病に支配されている。