最近、書棚を見せてほしいという取材依頼が増えてきたというマリさん。自宅の書棚を「日々の生活の痕跡を残す貝塚のようなもの」と考えているそうですが――。(文・写真=ヤマザキマリ)
わが家の書棚は生活の痕跡を残す貝塚のようなもの
ここ最近、東京の自宅にある書棚を見せてほしいという取材依頼が増えてきた。
ここへ引っ越すときに作ってもらった天井までの書棚には、子どもの頃に読んでいた本や図鑑から、仕事で使うもの、自著、または献本として送られてきたものまで、あらゆる本が雑然と詰め込まれている。
資料本は仕事机から手を伸ばせば取れるところに集まっているし、特に読み返しそうもないものは普段視線の届かない片隅に積み重なっている。
わが家の書棚は、日々の生活の痕跡を残す貝塚のようなものと言っていい。
客人を頻繁に家に招く習慣のある西洋の国々では、書棚は家主の人格やセンスの見せ所としての側面を持つ。財力のある家では家主の知性や教養の演出を担う家具として、豪華な装丁の百科事典や文学全集などがこれ見よがしに並んだ書棚が設らえられていたりする。
比較文化学者の夫はその手の書棚を見ると嫌悪感が湧くらしいが、本への関心がないよりはまだましだと思う。