二條若狭屋「不老泉」

可愛らしい小箱に詰まった葛湯。松に被る雪の絵柄には「葛」、うさぎが餅をつく月には「抹茶」、桜の花には「しるこ」が入り、三種の味が楽しめます。

抹茶としるこにはあられや水鳥形の麩焼きが入っていて、湯を注ぐとぽっかりと浮かぶのも嬉しいところ。また葛は、特有のまったりとした口当たりを楽しめるようシンプルな仕立て。いずれも熱い湯を注いでゆっくり混ぜると、トロリとした味わいになります。

いかにも京の老舗の菓子らしく、不老泉の題字は中村不折、箱の版画は徳力富吉郎、箱の掛け紙は神坂雪佳の手によるという風情あるひと品です。

いずれも明治から昭和にかけて活躍した書家や絵師。おめでたい名の葛湯をいただきながら、そんなゆかしい話を繰り広げるのもまたご馳走の一つです。

 

 

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