紫野源水「松の翠」

年を通して緑の葉が生い茂る松は、「常磐の緑」と称されて繁栄の象徴としても大切にされてきた、いわば日本を代表する樹木です。

新年の家の門に松を飾るのも、そこに神様が宿ると信じられてきたから。日本画や着物などのデザインでもたびたび登場する馴染み深い植物です。

そんな松を洗練された抽象美であらわした菓子が「松の翠」。羊羹地の上に大納言小豆をちりばめて、その上からすり蜜をかけて固めたもので、松の木の幹の肌を表現しているそうです。

食感は羊羹のようでもあり、餡玉の松露のようでもあり、香り豊かな大納言の粒感も相まって、小ぶりながらも味わい深いひと品。

年中求められますが、この季節には、めでたい意匠の干菓子と合わせれば、年始の手土産にも、不意のお客様用にも重宝しそうです。

【関連記事】
【京の菓子】江戸時代より親しまれた奈良漬けをスイーツに。奈良漬とバタークリームの意外なマリアージュ 田中長奈良漬店「奈良漬バターサンド」
【京の菓子】秋の初めに飛来する雁のすがたを、のど越しのよい葛を使った黒糖の菓子の中に。かぎ甚「初雁」
【京の菓子】さっぱりとした酸味と甘味の絶妙なバランス。見た目も涼やかな白い羊羹 UCHU wagashi「フルーツの羊羹」