通信教育でメイクを学び、国際ライセンスも取得
宝塚には専門のヘアメイクは存在しない。舞台に上がるには、役にふさわしいヘアスタイルもメイクも、すべて自分自身で考えてセルフプロデュースしなければならない。CHIHARUさんはしだいに「自分はメイクが得意だ」ということに気づいていく。
そしていつの間にか同期や後輩のヘアメイクを手伝うようになっていた。
私は、母の口紅を塗って鏡の前で悦に入っているような、メイクが大好きなこどもでした。指輪もつけてハイヒールを履いて、きれいにしているのが好き! その上、人間観察も得意で、子どもながらに目の前の大人が本心で話しているんじゃないことを感じてしまう感受性を持ち合わせていました。
そのせいか、相手を見たときに、その人の個性をどうやったら生かせるか、ということを瞬時に感じて、メイクに生かせるようになっていたんです。もしかしたら本人以上に本人を生かすメイクができるようになっていたかもしれません(笑)。
ある日、雑誌を見ていたCHIHARUさんは、世の中には「ヘアー&メイクアップアーティスト(以下 ヘアメイク)」という職業があることを知る。将来はヘアメイクを仕事にしてみたい、という漠然とした夢が現実味を帯び、なんと通信教育でメイクを学び始め、国際ライセンスまで取得する。
入団してから15年を過ぎたころには、私がメイクの仕事をしたいと考えていることはなんとなくみんなに知れ渡っていました。でも、まだいつ退団するかなんて決めてはいなかった。とにかく手が抜けない性格なので、毎日全力投球で舞台を務めていたんです。
ある日、劇団から「組長になってくれないか」と打診されました。私は「組長になったら40歳過ぎてしまう!そしたらヘアー&メイクアップアーティストになれない!」と思って即座にお断りしたんです。「そしたら花組どうすんねん!」と言われましたが「ヘアメイクの仕事をしたいんです」と正直に打ち明けたら「ちはる、せやなあー、次の仕事をするのに、40過ぎたらしんどいなぁー」と理解してくださり…。それでまもなく退団を決意しました。