正反対だったからこそ気が合ったひばりさん

そしてなにより、美空ひばりさんとの思い出の品々も手放すことはできないものだ。手紙や小さな時計などかさばらないものばかりなので、「私が死んだら一緒にお棺に入れてちょうだい」と長女に頼んである。

ひばりさんと知り合ったのは、私が十六歳、彼女が十三歳のときだった。『月刊平凡』で彼女と対談した私は開口一番こう言った。

「私たちもお休みのときくらい、ボーイフレンドとデートして、お揃いのセーターを着たり、腕を組んだりして歩きたいわよね」

すると彼女は、しっかりした口調でこう答えたのだ。

「私はそうは思わないわ。私たちは夢を売る商売なのだから、ファンの皆さんが嫌がることはするべきじゃないわ」

なんて気味の悪い、憎たらしい女の子だろうと思ったものだ。

その後は忙しくて顔を合わせることもなかったのだけれど、成人して再会すると、些細なことから意気投合して二人でお酒を飲み歩くようになり、親友になった。

ひばりさんは年下だが、弟と妹がいるので「しっかり者のお姉さん」。一方私は「一人っ子の甘えん坊」。性格は正反対だったが、だからこそ気が合ったのかもしれない。