一度きりでもそれは不貞
また、事実婚の同性カップルが、パートナーの不貞行為によって破局したことについて、元パートナーに損害賠償請求をした裁判例を紹介しよう。
これまでの慣例から考えれば、同性の事実婚カップルは法的保護の恩恵を受けられなくてもおかしくなかった。しかし2020年3月4日の東京高裁判決では、「同性同士でも、婚姻に準ずる関係から生じる法律上保護される利益を有する」として、同性同士の事実婚に法的な保護を認めた。この判決はその後2021年3月の最高裁で確定した。
次に「どのように」だが、裁判上で不貞が認められるときは結果として、「特定の相手と不貞行為を繰り返すこと」、すなわち特定の相手との複数回以上の性行為が理由とされることが多い。
配偶者以外の相手と性行為があれば、一度きりでもそれは不貞である。ただ、予期していない一度きりの不倫の証拠を、不倫をされた配偶者が摑むことは至難だろう。継続的に不倫がなされて、いつもと様子が違うといった変化に気づいてから、一般に証拠を探す場合が多いと考えられる。
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1 最高裁平成8年3月26日判決
2 東京地裁平成26年4月14日判決
3 東京地裁平成27年7月27日判決
4 東京地裁平成21年3月11日判決
5 福岡地裁令和2年12月23日判決
6 名古屋地裁昭和47年2月29日判決
7 東京地裁令和3年2月16日判決
※本稿は、『不倫―実証分析が示す全貌』(中公新書)の一部を再編集したものです
『不倫―実証分析が示す全貌』(五十嵐彰〈著〉 迫田さやか〈著〉/中央公論新社)
配偶者以外との性交渉を指す「不倫」。毎週のように有名人がスクープされる関心事である一方、客観的な情報は乏しい。経済学者と社会学者が総合調査を敢行し、海外での研究もふまえて全体像を明らかにした。何%が経験者か、どんな人が何を求めてどんな相手とするか、どの程度の期間続いてなぜ終わるか、家族にどんな影響があるか、バッシングするのはどんな人か。イメージが先行しがちなテーマに実証的に迫る。。