ハイテンションなボケ担当の長谷川雅紀さん(51歳)、落ち着いた口調で手綱を締めるツッコミ担当の渡辺隆さん(44歳)。長い下積みを経て漫才コンビ・錦鯉として「M-1グランプリ2021」で史上最年長王者に輝き、一躍時の人に。苦節ウン十年、人生後半に幸運を掴んだ2人に心境を聞いた(構成=村瀬素子 撮影=宮崎貢司)
滲み出る「中年芸人」の悲哀
長谷川 こ~んに~ちは~。
渡辺 うるせえよ。今日は『婦人公論』さんの取材だよ。舞台じゃないんだから落ち着けよ。
長谷川 M-1で優勝してから、いろんなところから声をかけていただくようになりました。なかでも感激したのは、『徹子の部屋』に呼ばれたこと。
渡辺 芸人としての夢の一つが叶いました。
長谷川 20代の頃、いつか出たいと思っていた番組がいくつかあったんです。でもあまりにも僕が売れるのが遅かったせいで、終わってしまった番組もあって……。子どもの頃からテレビで見ていた徹子さんを目の前にして、感激もひとしおでした。
渡辺 番組で短いネタを披露したら、徹子さん、「なんともいえない憂いがある。涙が出るような感じ」とおっしゃって。本当にうっすら涙を浮かべているように見えて。お笑い芸人が人を泣かせるなんてマズイけど。
長谷川 なんでだろう。子どもと一緒に動物園に行くという、泣く要素のないネタだったけど。