正直言って、東京五輪の金メダルは想定外(笑)。もちろん、13年に7年後の東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まった時は、「金メダルを獲りたい」と思っていましたよ。

当時は中学1年生。まだパンチ力は弱く、動きもぎこちなかったけど、「2020年、20歳で五輪代表に選ばれて金メダルを獲る!」とノートに書いていましたから。子ども心に、言霊を信じていたんでしょうね。(笑)

東京五輪では、良くて銅メダルかな、と踏んでいました。というのも、圧倒的な実力を誇っていた台湾のリン・ユーティン選手と対戦することになったら、きっと勝てないと思っていたんです。

でも、林選手が、私が決勝戦で闘ったフィリピンのネスティー・ペテシオ選手に初戦で負けてしまった。それで、私にもメダルのチャンスはあるかなと。

ただ、準決勝に勝った時点で涙腺が崩壊してしまい、周りからは「まだ試合は続くぞ!」と冷やかされてしまって。

五輪でメダルを獲るか獲らないかで、その後の人生が大きく変わる。そう自分にプレッシャーをかけていました。それに、フライ級の並木月海(なみきつきみ)選手は絶対にメダルを獲ると思っていたし、彼女がメダルを獲って自分が獲れなかったらすごく落ち込むことがわかっていた。準決勝で勝ってメダルが確定したらほっとして、涙が込み上げてしまったんです。

オリンピックって、勝てばすごく注目していただける反面、負けてしまったらそれで終わり。出場したのを知っているのは地元の人だけなんてことも。メダルのあるなしで天国と地獄に分かれてしまうことが怖かった。

金メダルを獲得した瞬間も涙が溢れましたけど、喜び以上に、プレッシャーから解放された安堵の涙だったと思います。