ボクシングの神様がついている

鳥取県米子市に生まれた入江さんは、小学2年生の時にたまたま読んだ小山ゆうの漫画『がんばれ元気』に影響を受け、ボクシングを始める。

中学は陸上部で活躍し、全国中学駅伝に出場。県立米子西高校からボクシングに専念、2、3年生で全日本選手権(ジュニア)を連覇し、世界ユース選手権では2年連続銅メダルを獲得した。

『がんばれ元気』の主人公・堀口元気がカッコ良くて。憧れましたね。小学校低学年で読んだことが良かったんだと思います。子どもって自分の将来に保険をかけないじゃないですか。高学年になっていたら、「現実は漫画のようにいかない」とか、「ボクシングの道は厳しい」なんて考えて諦めていたかもしれない。

母は初め渋っていました。でも、父がノリノリで(笑)。母に内緒で、自宅から車で10分ほどの米子市内唯一のボクシングジムに見学に連れて行ってくれ、その場で入門手続きをしました。

でも、いざやってみると全然楽しくなかった。私は元来、逆上がりもできないほどの運動音痴。ボクシングの基本がなかなか覚えられませんでした。パンチも打てないし、フォームも固められないので、戸惑うことばかり。

入門1年後、母に「もうやめたい」と言うと、もとは私がボクシングをやることに反対していた母が、「6年生までやると言って始めた以上、まっとうしなさい」と。やめるにやめられなくなってしまったんです。

ジムの送り迎えは、父と母が交代でしてくれました。一人っ子だったせいか、たっぷり愛されて育ったという実感があります。私が興味を持ったことはすべて挑戦させてくれました。親に導かれたというより、後ろから支えてもらった感じですね。だから自分の人生は自分で切り開く、という考えが自然に芽生えたのかもしれません。