聖地巡礼という新たなビジネス
もう一つの重要な要素は、「ロケ地」である。
ドラマ制作会社は、ドラマから派生する付加価値をより増やすために、ストーリーの世界観に合うロケ地選びに気を遣った。
地域との連携によって制作コストを減らすことも重要な目的であったが、主な目的はロケ地を観光する聖地巡礼という新たなビジネスを生むことだ。
主な成功事例は『冬のソナタ』の南怡島(ナミソム)、『宮廷女官チャングムの誓い』と『オールイン 運命の愛』の済州島(チェジュド)である。
聖地巡礼の成功例が出ることによって、企画・制作の段階からドラマと観光を結びつけて作品の世界観をより引き立てることが今ではドラマ制作の前提となっている。
観光地化を狙う場所をドラマのなかで登場人物が自然に訪ねるような設定やストーリーテリングが、積極的に試みられた。
時代劇の野外セットは撮影が終わったらテーマパークとなり、ドラマのなかで出てきた地方の食事はレシピ本として出版され、ドラマの主人公のイメージを使用したお土産まで用意するなど、ドラマの付加価値をいかに活用していくのかについても海外市場を意識したつくりとなった。
ドラマ『IRIS アイリス』は済州島と秋田県をロケ地とし、日本と韓国の両方のドラマファンと観光を結びつけた見事な成功例である。
※本稿は、『韓国コンテンツのグローバル戦略』(星海社)の一部を再編集したものです。
『韓国コンテンツのグローバル戦略』(著:黄仙惠/星海社)
ドラマ『冬のソナタ』が韓流ブームを巻き起こした「韓流元年」=2003年から20年が経過し、韓国コンテンツは世界中で人気を集めています。映像分野では『パラサイト 半地下の家族』がアカデミー賞を受賞、『イカゲーム』がNetflix史上最大のヒット、『六本木クラス』のように韓流ドラマのリメイクが日本で放映され、音楽分野ではKARAや少女時代によるK‐POPブームのバトンがTWICEやBTSへと受け継がれ、縦スクロール型ウェブ漫画・ウェブトゥーンは漫画大国の日本にも普及しました。本書では韓流の20年間――韓国コンテンツビジネスがグローバルなIP制作・展開体制を築くまでの変遷を辿り、その躍進の秘密に迫ります。