太田さんいわく、『家なき子』は、大人の俳優に依存しない自立した子役の誕生を記す画期的な作品だったそうで――(写真提供:Photo AC)
主に、映画・テレビなどで「子供の役」を演じる俳優を指す「子役」。一言で「子役」といっても、美空ひばりさんら「映画」を舞台に活躍した俳優がいれば、「バラエティ番組」で人気を博した内山信二さん、「テレビドラマ」で存在感を高めた安達祐実さんなど、時代や視聴者のニーズに伴い、多くの違いが存在します。一方「しばしば、大人の俳優へと上手く脱皮することの難しさ、それゆえの挫折があった」と話すのが、社会学者の太田省一さんです。太田さんいわく、昔から子役につきものであった、いかにして俳優を続けるかという「子役のその後」問題は、2000年代になると徐々に消え、「子役は大成しない」というステレオタイプな見方では通用しなくなってきたそうで――。

安達祐実と『家なき子』

安達祐実が「天才子役」としての名をほしいままにしたのが、いうまでもなく『家なき子』(日本テレビ系、1994年放送)である。

中島みゆきの歌う主題歌「空と君のあいだに」も有名な同作だが、内容は安達祐実演じる主人公・相沢すずの波乱万丈の物語を描いたものである。

すずは小学6年生。服装はいつもオーバーオールで、首にはがま口の財布をぶら下げている。

家庭の貧困、それに加え継父の家庭内暴力や母の病気といった逆境のなか、小学6年生のすずは自ら人生を切り拓くべくさまざまな困難に立ち向かう。

それは決して綺麗事ではすまない。やむにやまれぬ事情からとは言え、すずは盗みさえも働く。

幼い子どもにとって、たったひとりで生き抜くことは簡単ではない。

周囲の大人たちはそんな境遇を知り、気の毒がりもする。だがそれは、すずにとって、生きていくうえで何の足しにもならない。