40代からフォトジャーナリストに
もともと私は、普通の会社員だったんです。でも30代後半でリウマチ(のちに全身性エリテマトーデスと診断)に罹り、体が動かなくなってしまいました。一時は一生治らないと覚悟していたのですが、幸いにも治療が奏功して寛解。そのときに、どうせ一度の人生なら、これからはやりたいことをやってみようと決意したのです。
ちょうどそのタイミングで、パレスチナの子どもたちの写真展を見る機会があり、大きな衝撃を受けました。どうしても現地に行ってみたいと思い、カメラなど撮影機材をいろいろと準備して、半年後ぐらいに40歳で初めてパレスチナの地を踏んだ。それから毎年のように現地に通うようになり、雑誌に記事を発表したり本を書いたりと、フォトジャーナリストとして仕事をするように。
最初のうちは半年ぐらいパレスチナにいて、お金がなくなったら日本に帰ってくるというサイクルを続けていました。
「あんな過酷な状況の所に、よく長いあいだ居続けられるね」と人から言われたこともあります。でも私は全然そう思わなくて、できることならずっと向こうにいたかったぐらい。
平和な日本ではみんな老後の心配をしながら生きているように見えるけれど、パレスチナでは刹那、刹那で人が生きている。家族を喪ったり、悲しいことも多いなかで、人々が結束したり、他人の痛みや悲しみに寄り添ったり。パレスチナの人たちのほうが、本当に人間らしい生き方をしているのではないかと感じたりもしました。私にとっては居心地がよかったんですね。
何よりも、現地の人たちが命がけで私をいろいろな所へ連れて行ってくれることには心を動かされました。彼ら彼女らが私に見せてくれるもの、教えてくれることを、私も伝えなくてはいけないのではないか。そう思って写真を撮り始めて、それがだんだんと仕事になっていったというわけです。