ジャーナリストの古居みずえさん(撮影◎本社・奥西義和)
自然災害、国際紛争、テロ、大規模事故……世界各地で起きるさまざまな事件。しかし昨今は大きなニュースも瞬く間に消費され、忘れ去られてしまう。そんな中、一つの対象に腰を据えて10年、20年という長いスパンでカメラを回し続ける女性がいる。《後期高齢者》を目前にしているとは思えない大きな熱量を秘めて、取材対象と向き合い続けるジャーナリストの古居みずえさん。なお走り続けるその原動力とは。
(構成◎古川美穂 撮影◎本社・奥西義和)

30年以上、パレスチナに通って

ロシアのウクライナ侵攻以降、日本での国際関連のニュースは隣国の北朝鮮や中国を除くとウクライナ情勢が中心です。昔に比べ、ミャンマーやアフガ二スタンなどの報道は、あまりメディアに出なくなってしまいましたね。

もちろんウクライナ情勢は重要ですが、他のさまざまな国を粘り強く取材している人たちもたくさんいるのに、報道が1ヵ所に集中してしまうのは少し残念な気がします。

私自身は40歳の時から30年以上パレスチナに通い続け、報道写真やビデオ、ドキュメンタリー映画などを撮ってきました。

ご存じのようにパレスチナ問題というのは、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教に共通する聖地エルサレムのあるパレスチナ地域を巡る、アラブ人とユダヤ人の争いです。パレスチナ人の住んでいた地域に、3000年前にこの地に住んでいたといわれるユダヤ人が戻ってきて、1948年にイスラエルを建国しました。両者の争いに他の大国の思惑も加わり紛争が激化。70~80万人のパレスチナ人が難民となり、混乱は今も続いています。

廃墟の前で放心したようにたたずむ少女マリアン(9歳)。少女の住むジャバリア東部エル・ギレムはもっとも攻撃が激しかったところだ (2009年)〈撮影◎古居みずえ〉