大人が子供を甘やかしてご機嫌とりをした結果

幼児化は、大人が子供に適切な愛情と厳しさで接することをしなくなり、ただ甘やかしてご機嫌とりをした結果、子供のいやがることは一切させなかった結果である。

「ご飯の後片づけをしなさい」
「ボク、宿題あんだよ」

「あいさつをしなさい」
「何であいさつなんかしなきゃなんないんだよ」

「テレビばかり見ていないで本を読みなさい」
「AちゃんもBちゃんもこの番組見てるよ」

『幸福は絶望とともにある。』(著:曽野綾子/ポプラ社)

そこで大人は黙るのである。幼児化を防ぐには、これらのことをすべて幼い時に、問答無用(むよう)でさせる癖をつけることだろう。

あいさつをさせるのは、心ならずも、他者との最低のつながりを保つことを教えるためだ。食事の後片づけは、人間が生きるための基本的な営みの重要性を体で覚えさせるためだ。

そしてテレビだけでなく本を読めというのは、バーチャル・リアリティ(仮想現実)に頼ってどんどん実人生から離れることを防ぐためである。不思議なことに読書も直接体験ではないのだが、辛抱も身につき、哲学も残るのである。

幼児性の特徴は幾つもあるが、周囲に関心が薄いこともその一つである。自分の病気には大騒ぎするが、他人の病気は痛くもかゆくもない。

万引きをゲームだと思っているのは、自分がただで欲しいものを手に入れられる、ということがわかっているだけで、万引きをされた店の痛手は全く思いつかない、という点にある。