(イラスト:村越昭彦)
厚生労働省が発表した国民生活基礎調査(2021年)によると、65歳以上の者のいる世帯は 2580万9000世帯(全世帯の49.7%)。その中でも32%が「夫婦のみの世帯」、次いで28.8%が「単独世代」と、1~2人暮らしが半数以上を占める中で三世代世帯数は年々減少しています。様々な家族のかたちはありますが、その中でも、最後まで自立したいと願う親と、老いていく姿を複雑な思いで見守る子。そんな家族が互いに納得できる日は来るのでしょうか?金沢聡子さん(仮名・鹿児島県・パート・63歳)は実母の自宅介護の苦労から、自分たちは娘に迷惑をかけたくないと思っていましたが――。

貯金をはたいて購入した戸建てが落とし穴に

58歳のときに、3年間寝たきりだった実母を自宅介護で見送った私。苦労も多く、夫にも負担を強いてしまったつらい経験だったので、できれば娘には迷惑をかけたくないと常日頃から思っていました。

そんな私の思いを理解してくれている夫とも、「もし、どちらかが先に死んだら、施設に入って、介護のプロに任せよう」と意見が一致しています。

そのために、コツコツとお金を貯める日々を送っていましたが、5年前、ひとつめの思わぬ事態が起きました。仕事をしながら子育てをしていた娘が、あまりの忙しさに体を壊してしまったのです。

最近の母親たちは、とにかく大変。保育園への送り迎えだけではなく、習い事への付き添い、ママ友との付き合いと、忙しさに追われています。

どちらからともなく同居の話が持ち上がったとき、私は娘に宣言しました。「仕事をしながらの子育ては、大変だと思う。だから、同居して手伝います。ただし、子育てが一段落するまでね。いずれ私とお父さんは家を出るから、いつまでも甘えないで」と。そして思い切って、娘婿の職場の近くに戸建てを購入し、同居を決めました。