同居するとは言っても、子どもの世話にならないという気持ちに変わりはありませんでした。新居のある地域は、自然に恵まれて子育てをするには最適の場所。

でも、これから年をとり、体のあちこちが思い通りに動かなくなっていく私たち夫婦にとっては、日々の買い物や病院通いが大変です。元気なうちに街に戻ろう。夫と、そう話していました。

家の購入代金の4分の1は私たちが老後資金として貯めていたお金をすべてはたいて負担したものの、なんとかなるという算段でした。それまで住んでいたのは賃貸住宅。新居の月々のローンは娘夫婦が負担する約束なので、家賃はなくなります。その分を貯蓄に回し、同い年の夫に65歳まで働いてもらえば、ある程度の貯金ができるはず。

娘の子育てが一段落するころには、安アパートでも借りて、年老いた夫婦ふたりが生活ができるくらいのお金がたまっていると踏んだのです。

ところが、ふたつめの思わぬ事態が起きました。土木関連事業に携わっていて順調だった夫の仕事に陰りが見え、夫は娘一家と同居をはじめた直後に職を失ったのです。

60代を目前に、夫のアルバイト収入と、繰り上げ受給している私の年金を合わせて、暮らしていくのがやっと。貯金どころではありません。娘夫婦と同居している家から独立する計画も頓挫しそうです。